ETCフィーバーの謎
なぜ今になってETCがこれだけ注目され売れたのか、興味深い消費行動について考えてみます。
ETC利用者に対する「休日1,000円乗り放題」と「助成金」制度により、3月に入ってカー用品店のETC売り場に人が殺到、取り付けサービスも間に合わないという状況が続いているようです。
ETCシステムの一般利用が開始されたのは2001年11月なので7年以上前ということになりますが、なぜ今になってこれだけ注目されたのか、興味深い消費行動について考えてみます。
フィーバー前のETC事情
- 車載機本体の値段は高かったのか
私は2004年頃に15,000円ほどで購入・取付けした記憶があるので、少なくとも5年くらい前には端末代金はそのくらいまで下がっていたということになります。購入費用の「助成金」というのは当時も今までにも何度もあって、さらに「ETCカードを新規契約すれば端末本体は無料プレゼント」というカード会社のキャンペーンも沢山ありました。
つまり初期投資としてはそれほど大きなものではないと言えます。(少なくとも車を所有する為の必要経費を思えば僅か) - 割引サービスはなかったのか
2005年には深夜なら30%オフ、朝と夕方の通勤時間帯で100km未満であれば半額という各種割引サービスも始まっています。(時間帯による割引は、その時間帯に1分でも高速道路上にいればよいという仕組みのため、うまくやればほとんどの場合は半額になる)
また同年にETCマイレージサービス(通行料の支払額に応じてたまるポイントが無料通行分の還元額に換えられる)というサービスも始まっています。一番お得な交換単位でみると、50,000円で1000ポイント=8,000円分の無料通行分が還元。2,000円分を月にたった1回走ると仮定しても2年に1度は8,000円もの還元を受けられます。 - 投資に見合うメリットはなかったのか
ETCの最大のメリットとして車を止めることなく、煩わしい小銭を用意することなく、ドライブスルーで通行料金を清算できるというプライスレスの便利さがあります。
これだけの十分過ぎるようなメリットがありながら、日本でのETC普及は遅々として進まなかった。それがこの3月、「休日1,000円乗り放題」の合い言葉とともにETC売り場に人が殺到したのです。
この消費動向は、非常に非常に興味深いものです。
マスレベルの消費に影響を与えるマーケティング事例としてはものすごく面白い例だと思います。
smashmedia 河野氏の記事『ETC売り切れの要因分析』にて、コメント欄を含めいろいろと議論されていました。
消費者は「休日1,000円乗り放題」とか「助成金」という明らかなメリットがあれば飛びつくことも証明された。じつに興味深い。
一番興味があるのが、消費者は「休日1,000円乗り放題」と「助成金」のどっちに反応したのかということ。
消費者は「休日1,000円乗り放題」と「助成金」のどっちに反応したのか
飲み放題、食べ放題、詰め放題…。やはり「○○放題」という言葉のインパクトは強烈なのかなと思います。
実際はそこまで安くない(食べ放題でもほとんどの人はそれほど食べられない)としても、やりたい放題できた方が心理的にも楽という意味では「○○放題」という言葉には魔法のような効果があるのかもしれません。
「乗り放題」が起爆剤なら「助成金」はなくてもよかったのか
騒動の原因だけを見れば「助成金」は無くてもよかったかもしれない、というのは私も思います。
しかし、ETCで重要なのは「高速道路利用者の月間ETC利用率」ではなく「車載器のセットアップ累計台数」だと思います。
何故かというと、「高速道路をよく利用する人」がETCを付けている割合が高くなるのは当たり前のことで、「ほとんど利用しないけどたまに利用する人」のために手動レーンを残さなければいけないことを考えると「高速利用率に関わらず」取り付けてあることが重要なんだと思います。
車載機は安いものなので1度買ってしまえば車を売るとしてもそのままにする可能性が高く、正に瞬間最大風速を稼ぐという意味ではこのダブル攻勢は効果的だったと思います。
心理の動きを綿密に計画する
今回のETCは「売り切れ」というニュースが流れたことで更に「早く買わないと!」という心理が働くという、最大風速を更にあげる連鎖が起きたと思いますが、同じ商品を同じ値段で売るにしても、表現1つ、きっかけ1つで売れ方が全く違ってくるというのは興味深いです。
私はいくつかのECサイトを見ていますが、「商品代金10%オフ」にした場合と「送料無料」にした場合、どちらもお店側の売上げは同じだとしても、売れ方は全く変わってきます。
特にECにおいては対面することがないため、サイト上でのユーザー心理を想像することが、一番重要なポイントかもしれません。
まとめ
「休日1,000円乗り放題」は2011年まで続き、「車載器のセットアップ累計台数」はかなり増えることと思います。しかしサービス開始から10年かけてやっとの話。10年間の普及促進コストは、最初から端末を無料配布するコストとどのくらい差があるのかなと思ってしまいます。
高速利用者数ではなくセットアップ累計台数を増やすのが目的だとすれば、瞬間最大風速の数ヶ月間やれば十分な気もします。
2車線しかない日本の高速道路においては、交通量増加による渋滞、事故の増加を考えると高速道路は少し高いくらいにした方がいいのではないかと思いました。
Posted on 2009/04/01LIFE
2 Comments
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Takeshi | Posted on 2009/04/14
コメントありがとうございます。
確かに「いつか使うから」程度の人は反応していないかもしれませんね。
逆にいうと「気になってたけど買うまでは至っていなかった」層がものすごーく沢山いたのかなと思いました。
あと端末買えばカードも用意されてその日から使えると思っていた人は結構多いみたいですね。レーンが多い大きなインターでは、分散して配置してありますね。例え1レーンしか必要ないとしても、非ETCは一番左!となったら車線変更の事故も増えてしまいそうです。

おそらく一番の要因はテレビ等によるメディアの過剰露出なんでしょうね。ブームなんてのはだいたいそんなものですけど。
ちなみに
> ほとんど利用しないけどたまに利用する人
は「助成金」では反応が薄いと思います。GW前とか行楽シーズン前に自然と需要は高まるでしょうから、そのタイミングでは後押しになると思いますけど、「いつか使うから」というためには買わないかな。カードの申請も(簡単とは言え)やらなきゃいけないし。
むしろレーンをひとつに絞っちゃって、行列を作って圧倒的に不便さを感じてもらったほうが普及するんでしょうけど、国がやる手前、そういうあざとい手法は使えないでしょうね。