2009年WEBデザイン新潮流(前編)
2008年のWEBデザインレビュー、そして2009年以降の最先端WEBデザインについて熱く語ります。
WEBデザインのワールドワイドなトレンドを紹介している記事として代表的なのは Smashing Magazine の Web Design Trends For 2009 。
誰かがやり始めてにわかに流行はじめたものが、こうして紹介されることでトレンドとなっていきます。
国内でも年末のイベントでトレンドに関する話題があったようで、
などのエントリーで詳しく解説されていてとても参考になります。
私もこういうトレンドは好きで、沢山のCSSギャラリーをRSSで流れ購読するほどの WEBデザインギークではあるけれど、一方で日本国内の仕事として必要とされるデザインとは全く違うベクトルを持っていると思っています。
海外のトレンドは実際の仕事に反映できるのか
多くのクライアントにとって「こういうグラデがトレンドなんですよ」とか「やっぱツヤツヤ感が気分ですよね!」とか全く意味がなくて、そのクライアントのビジネスに見合う、またそのクライアントの顧客が理解可能な範囲で良いと思えるものを深く読む方がずっと重要な事柄です。
昨今の進化では一番分かりやすい「幅広化」も、そのサイトの想定ユーザの環境によっては 760px であるべきかもしれないし、1000px であるべきかもしれない。そんな部分に「トレンドどうこう」はデザイナーのマスターベーションに過ぎないと思います。
企業の担当者や代理店の人など、何を読んだかこういうトレンドでやたら頭でっかちになってしまって「(鼻息荒く)幅は950pxで!」などと言う人が時々いますが、大抵は広すぎる。
海外のトレンドを注意深く観察するのはよいことだと思うけど、ただ単にトレンドこそ正義と思ってしまうのは大きな間違いだと思います。
よっぽどWEBデザインが注目されるような(WEB系イベントサイトなど?)場合以外、日本国内では意図的に1年〜2年くらい前のトレンドを取り入れる方がクライアントの理解度、満足度は高いのかもしれません。
では本題となる2008年のWEBデザインについて自分なりの考察。
グラフィック合戦は燃え尽きる
2008年のデザイントップ10などを見ても、やはり表現の幅がどんどん広がっています。
しかし、CSSデザインが一気に浸透してギャラリーサイトも急増した2006年、2007年から、驚く程劇的な進化はないようにも感じます。私はこの方向性はもう頭打ちなのではと思っています。
というのも、グランジエフェクトとかウッディとか、周りに植物沢山生やすとか、きらびやかな装飾つけるとか、はっきり言ってキリがない。「手の込んだグラフィックを背景にあててコテコテにする」というのは結局はそのグラフィックパワーそのものであって、言ってしまえば Photoshop 勝負であって、それだったらWEBデザイナーはグラフィックデザイナーにかなわないんでないか。
「あの超絶カッコいい絵が描けるグラフィックデザイナーがちょっとHTML覚えれば、中途半端なWEBデザイナーなんて吹けば飛ぶよね」っていう方向性なんだと思います。
WEBデザインは進化し過ぎたかもしれない(海外では)
例えば、私がこの ROSTRATA.net をデザインし公開した2006年8月、当時それほど多くなかったCSSデザインギャラリーのいくつかが取り上げてくれました。当時新しいっぽいデザインにしていた事に加え、CSSレイアウトだったこと、Flash のような表現を JS で実装していたこと(その後やめた)、ブログエンジン WordPress をベースにしながらスタティックサイト風に構築していたこと、それらが珍しかったからだと思う。
ただそれから2年、それらは平均的なWEBデザイナーであれば当然のようにできることになったし、珍しくもなんともない。
そして更にレベルの高いデザイナー達は「独自に利用する」のではなく「共有する」ことに目を向け、PSD を配布したり、デザインを WordPress テーマとして配布するようになりました。
今では印象的な処理をした PSD を無料でダウンロードできてしまう、Wordpress のテーマ適用ボタンを押すだけで美しいWEBデザインのサイトを所有できてしまう。
それがオリジナルのデザインであるのか、配布されたものであるか、実にどうでもよく、調べる価値もないし、クレジットを消したりちょっとした手を加えてしまえばそれがオリジナルにも見えてしまいます。
つまり2008年末現時点において、少なくともリッチグラフィック思考のWEBデザインはグラフィックデザインとしては価値があれど、注目すべきWEBデザインとしてはそれほど価値がないと思います。
(時々、どこかで配布された Awesome! な WordPress テーマをそのまま利用している WEB制作会社を見る事があるけれど、よく見てる人には分かってしまうのが恥ずかしい)
じゃあWEBデザインへの情熱はどこへ向ければいいの
WEBデザインは情報閲覧ツールとしてのインターフェイスデザインとしての進化がコアとなり、退化とは違うシンプル化、スクリプトによる画面遷移の快適性の追求などに向いていくのではないかと思います。(ただ日本では海外ブログのようなグラフィック合戦もまだ始まってない)
冒頭でリンクしたWeb Design Trends For 2009 の中でも、1年2年前に比べて、グラフィック系のトレンドよりもインターフェイス表現に関するものが多くなってきています。
少なくとも、WEBデザインを仕事としている人たちが今目を向けるべきなのは、海外のリッチグラフィックサイトのトレンド追っかけではなく、それが正しいか正しくないかを別とした「ブレイクスルー的な何か」なのではないでしょうか。
次のエントリーで、そんな「ブレイクスルー的な何か」を感じたサイトを紹介したいと思います。
2009年WEBデザイン新潮流(後編)