2009年WEBデザイン新潮流(後編)
リッチグラフィック合戦から一線を画し、退化とは違うシンプル化、スクリプトによる画面遷移の快適性の追求をテーマに、ウェブサイトとしての新しい方向性を感じるサイトたち。
前エントリ『2009年WEBデザイン新潮流 前編』の続き、トレンドを横目にブレイクスルー的な何かを感じたWEBサイトを紹介します。
画像化? sIFR? どっちも飽き飽き
シンガポールのWEBデザイナーさんのサイト。
一見するだけでもセンスのある美しいデザインだと感じるサイトですが、なんとロゴを含む全てのテキストがプレーン(ブラウザフォント)テキストのまま。装飾のための最小限の画像と、CSS の工夫だけでこれだけのデザインを実現しています。
作者はサイト制作にあたり、このようなコメントを記載しています。
WEBサイトをシンプルに、うまく構造化し、かつ使いやすく作る為に、ブラウザフォントのみを利用するWEBタイポグラフィの限界やWEBカラーパレットの限界を押し上げつつも、その厳格な決まりをうまく使いたかった。
このデザイナーの考えの先進性や強い意思を感じます。
もちろんWindowsで閲覧したならばガビガビなのだけど、テキストの画像化や sIFR という考え方を突き進めると、結局はこうなるのでは。これこそがWEBサイトの一番あるべき姿ではないかと思います。2008年一番感動したサイト、WEBデザイナーです。
『WEBサイトらしい』レイアウトって、なんだったのか再考
山梨県にあるインテリアショップのサイト。
業界的なトレンドに流されず、こういった斬新なレイアウトを思いつき、そして商用サイトとして現実化する、というのは想像するより難しいこと。デザイナはもちろん、運営者側を含めてセンスも意識も高くないとできません。
テクスチャの切り替えとか、1pxのラインを巧みに使った複雑なレイアウトとか、なんといいうのか…WEBのことばっかり考えてるような人たちだけでは、こういうデザインは生まれないような気がして、ガツーンときました。
スクラップブックを読みあさるワクワク感
センスと高い技術をもち、個人名義で継続的にアウトプットをしているWEBデザイナー小野さんのサイト。
昨年末のリニューアルでの方向性は私にとっては意外なものでした。というのも、以前はオリジナリティのあふれるグラフィカルなものだったため、それが更に進むのかと思っていたからです。グラフィックデザインよりは、エディトリアルデザインといえるそれ。またこの段階で解像度ターゲットをWXGAにしてしまう所。紹介するまでもない有名なサイトだと思いますが、ブレイクスルーを感じるサイトとしては外せない1つです。
Flashにしない、ページをめくる体験
上記3サイトが「退化とは違うシンプル化」だとすれば、このサイトは「画面遷移の快適性の追求」の1つの解。
http://mekas.jp/
海外の視点から日本のファッションシーンをレポートするウェブマガジンのサイト。
シンプルなレイアウトとモノトーンの配色、そして個人的に写真のセンスがツボすぎて大好きなサイトなのですが、スパイス的な要素として雑誌を読み進めるような感覚の表現が斬新です。単にHTMLを遷移しているだけなのに、その瞬間のエフェクトを少し工夫するだけで、こんなにも「雑誌を読み進めてる感」が出せるのか、と関心させられました。長々とページを延ばしていくのも読み疲れるし、平凡なページネーションがついているだけでもなんだか味気ない。次のページを読み込んでみたくなる、そんなサイトです。
( MEKAS というのは、日本語の「おめかし」という意味での「めかす」だそうです。素敵です。)
まとめ
以上、よくあるトレンドWEBデザイン記事とは違う視点で4つのサイトを紹介しました。ここにあるような「ブレイクスルー」が実際「トレンド」になっていくかどうかは分かりませんし、実用レベルで普及するかどうかも分かりません。
しかしただ既存のトレンドを取り入れているサイトではなく、一歩も二歩も先を考え、まだ理解されにくいだろう事柄をあえて実演していっている姿勢というのは
かっこいいと思います。
2 Comments
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Takeshi | Posted on 2009/02/02
いやー長々としたエントリ読んでいただきありがとうございます。エラそうに書きすぎた感ありますが、自分に言い聞かせてる部分が多いです。
前編・後編と一気に読んじゃったよ。「あの超絶カッコいい絵が描けるグラフィックデザイナーがちょっとHTML覚えれば、中途半端なWEBデザイナーなんて吹けば飛ぶよね」ってトコ全く同感。自分みたいなウェブ一辺倒のデザイナーは、海外のトレンドに尻尾振って着いてくだけじゃダメだなーって、しみじみ思ったよ。